日本展示学会通信50号(2) |
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会員投稿 |
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○杉並区を探検し続けて16年(長澤信夫)
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○美術館の設計者選定に、我が国で初めて「資質評価方式」が採用される。(高橋信裕)これまで公共建築物の設計者選定は、「コンペ方式」が主流を占め、事業者の求める課題にそった設計案を競い合わせることで、設計者の選別を行ってきた。当然、その過程では、採用、不採用にかかわらず多くのアイデアが出され、図面作成に加え、模型の製作などの費用も参加者の大きな負担となっていた。こうした状況のもとで、横須賀市では、美術館の設計者選定に全国初の試みとして「資質評価方式」(QBS)を採用し、話題を呼んでいる。この方式は、アメリカでは広く普及しているとのことで、設計案を選考の主対象とする「コンペ方式」に対して、「資質評価方式」では、設計者の「人となり」と「仕事の進め方」が選考対象とされる。「人」を選ぶことで、コンペ方式のように採用案に縛られることもなく、事業者と設計者がゼロから議論し共同作業で理想の施設を作り上げていくことができる。横須賀市の美術館設計の選考(平成14年2月最終選定)では、3つのステップを設け、選考委員会(9名によって構成・委員長鬼頭梓氏)によって審査決定された。第一審査では、過去に手がけた設計作品の書類提出(応募者数・96人)を受け、経験や実績を審査し10人程度に絞り込む。第二審査では、設計者本人に対する面接を行い、市の求める美術館に対する理解度や姿勢、能力を審査し、3人ほどに候補者を絞り込む。最終の第三審査では、実際の建築作品を実地に調査し、発注者や施設管理者らから使い勝手などの意見聴取を行い、「最優秀者」を選定し、その候補者と設計業務を随意契約で委託する。審査過程は一般に公開され、「山本理顕氏・横浜市」が選ばれている。(開館は2007年予定) |
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○神戸の土木博物館計画の支援組織「土木の学校(仮称)」が設立され、始動開始(高橋信裕)「神戸文明博物館群構想」を掲げて計画を進めている神戸市では、その構想の先導的、中核的施設である「土木博物館(仮称)」の計画を土木学会の協力のもとで進めているが平成15年10月、その博物館の実現を目指し、実質的な運営の担い手を組織し、育成する市民団体「土木の学校(仮称)」を立ち上げた。「土木博物館(仮称)」は、「アーカイブ」と「コミュニケーション」を基本理念とし、わが国の「土木のナショナルセンター」を目指すもので、企画、計画段階から市民の理解と協力を求め、地域社会と共生する博物館づくりを志向している。「土木の学校(仮称)」は、計画から竣工までの過程においては、土木に関する市民参加型の活動を継続、実施し、市民の間に土木への理解を深め興味を触発し、同時に博物館づくりの機運を醸成していくことを目的とし、また竣工後は、運営の主要な役割を担う支援組織としての役割が期待されている。神戸には、日本の近代化を象徴する多くの産業遺産が点在していおり、地域そのものを土木の博物館として、調査、見学、研究することなども可能で、パフォーマンス的なイベントと連携させることで、新たな神戸の文化・観光の資源開発につながることが期待されている。また、こうした計画と運営に学会組織である「土木学会」が参画している点も、興味深い。 |
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発行日:2004年02月06日 | 2 | 1ページ | 2ページ | 3ページ閉じる |